授乳中に矯正治療はできる?
- 2024年11月12日
- FAQ
前回に引き続き、今回のQ&Aも、女性では気になる内容となっております。
Q 授乳中に矯正治療はできる?
A 可能です。
授乳中は、治療時に使用される局所麻酔や抗生物質が母乳中に移行し、乳児が授乳によって薬を摂取するのではと心配になるでしょう。
しかし、母親が服用した薬剤が母乳中に移行する量は極めて少なく、多くの薬の場合、母親が摂取した量の1%未満しか母乳中に移行しません。
以下の点について注意事項をまとめてありますので、ご覧いただけたらと思います。
1.麻酔について(局所麻酔)
矯正治療時に局所麻酔が必要な主な処置。
- 抜歯
- 歯科矯正用アンカースクリューの植立
(当院では、歯科矯正用アンカースクリューの植立時のみです。抜歯は、かかりつけ歯科医院にて行ってもらいます。)
局所麻酔を使用後、約2時間をピークにわずかに母乳へ移行しますが、6時間後にはその量は半分以下になり、12時間を過ぎると母乳への影響はほとんどありません。24時間後には完全に代謝されます。
現実的に、麻酔後6時間過ぎてからの授乳をお勧めいたします。
乳児が3ヶ月を過ぎると代謝機能もしっかりしてくるため、麻酔の影響はほとんど心配ないと考えられます。
2.投薬について
矯正治療時に投薬が必要な主な処置
- 矯正装置を装着した直後~3日間
- 抜歯後
- 矯正用アンカースクリュー植立後
処方される薬剤
- 解熱鎮痛剤(痛み止め)
- 抗生物質(抗菌薬)
痛み止めは、妊娠中と同じく、最も安全に使用できるとされているのは、アセトアミノフェンです。
抗生物質については、ペニシリン系やセフェム系、マクロライド系は1歳未満の乳児にも処方されることがあり、大きな影響はないとされています。
投薬に関しては、妊娠時と同じ注意点を守っていただければ問題ありません。
母乳への移行が心配なら、歯科治療の前に授乳を済ませる、または、治療後は6時間待ってから授乳すると良いでしょう。授乳の間隔が短く、6時間待つことが難しい場合は、歯科治療の前に搾乳しておくことも一つの方法です。搾乳で次の授乳分を確保できない場合は、人工乳を検討するのも良いでしょう。
3.授乳時期に対する矯正治療への対応
矯正治療は、虫歯や歯茎の腫れによる痛みが我慢できないといった緊急の状況にはあまり該当しません。そのため、新生児の代謝機能が未成熟な生後3ヶ月までは、麻酔が必要な処置や投薬を避け、ワイヤー交換や負担の少ない処置を行うことをお勧めします。生後3ヶ月以降に麻酔や投薬が必要な処置を検討するのが良いでしょう。
参考サイト・文献
「水野克己 著 授乳中の女性に処方するときの注意点」
「国立成育医療研究センター ー 妊娠と薬情報センター ー」