妊娠中に矯正治療はできる?
- 2024年11月5日
- FAQ
今回のQ&Aも、よく無料相談で質問を受ける内容となっております。
女性の方はぜひ一読していただけると良いかと思います。
Q 妊娠中に矯正治療はできる?
A 可能です。
以下の点について注意が必要となります。
患者さんへのお願い 1.
精密検査・治療時の注意事項 2.3.4.
1.妊娠中は歯肉炎に注意
妊娠中はホルモンバランスの変化などにより口腔内の細菌環境が変化し歯肉炎になる「妊娠性歯肉」の可能性が上がります。
ワイヤー矯正は、口腔内に装置があり歯磨きがしづらく虫歯や歯肉炎・歯周病のリスクが上がるため、歯ブラシをしっかりと行いお口の中を清潔に保つことが大切です。
2.妊娠中のレントゲン撮影について
矯正治療で撮影するレントゲンは、お腹から離れた頭部に行い、胎児への被ばく量も少ないため、基本的には問題ありません。また、お腹を保護する防護エプロンも着用いたします。
国際放射線防護委員会(ICRP)では、
胎児線量が約100mGy(mSv)以下であれば、基本的に問題がないとされています。
1000mGyを超えると重度の精神遅滞が高い確率で起こります。
感受性は、受胎後8~15週の期間が最も高いです。16~25週では、これらの影響に対して低感受性となり、それ以降は抵抗性になります。
当院で行うレントゲン撮影方法、撮影タイミング、被ばく量について
方法
- パノラマX線
- セファロ撮影
- CT撮影
タイミング
- 初診相談
- 精密検査時(矯正治療前)
- 歯の移動
- 歯根の状態の確認(治療開始後、1年毎に行っています。)
被ばく量
- セファロ撮影 0.01mGv( mSv )
- パノラマ撮影 0.02mGy( mSv )
- 歯科用CT撮影 0.2mGy( mSv )
成人の矯正治療を終えるまでに撮影するセファロ、パノラマ撮影は5~10枚前後でしょう。
人間は生きているだけで被爆しており、世界平均の一人あたりの年間自然放射線は2.4mGy( mSv )です。つまり、セファロ、パノラマ撮影を100枚取ってようやく追いつくレベルです。
それでも心配な方は、ぜひご相談ください。
レントゲン撮影を行わなかったときのメリット、デメリットを踏まえて矯正治療についてお話をさせていただきます。
3.麻酔について
妊娠中にこの局所麻酔を投与してもお腹の赤ちゃんへの危険性はほとんどないことが報告されています。
麻酔薬による影響はないですが、局所麻酔は、注射し麻酔薬を奏功させるので痛みを伴います。その痛みによるストレスが胎児へ影響を及ぼすかもしれません。そのため安定期である妊娠5ヶ月以降(妊娠16週~27週)に行うことが良いと考えます。
矯正治療時に麻酔が必要な主な処置
- 抜歯
- 歯科矯正用アンカースクリューの植立
(当院では、歯科矯正用アンカースクリューの植立時のみです。抜歯は、かかりつけ歯科医院にて行ってもらいます。)
4.投薬について
矯正治療時に投薬が必要な主な処置
- 矯正装置を装着した直後~3日間
- 抜歯後
- 矯正用アンカースクリュー植立後
処方される薬剤
- 解熱鎮痛剤(痛み止め)
- 抗生物質(抗菌薬)
現在、妊娠中でも比較的安全な痛み止めが多くなりました。最も安全に使用できるとされているのは、アセトアミノフェンです。痛み止めの効果としてはロキソプロフェン(ロキソニン)の方が高いですが、こちらは妊娠中に使用すると流産を引き起こす可能性が報告されています。
しかし、比較的安全なアセトアミノフェンですが、薬も使いすぎはよくありません。矯正治療時では、装置の装着直後、抜歯後、アンカースクリュー植立後の痛み起こる2.3日間を服用期間とし、必要最低限の使用にとどめるようお勧めしています。
抗生物質は抜歯後の感染防止となります。歯科でよく用いられる抗生物質としてペニシリン系やセフェム系は胎児に大きな影響はないとされていますが、こちらも必要最低限の使用にとどめるようお勧めしています。